芋虫男と小学生

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「それがなんだって話だけどな」 「え?」 「だって、それが好きなんやろ? なら、好きでいいじゃんか、女の子が少年漫画を好きになったらいかんなんて誰も言っとらんしな」 「おじ様」 「おっちゃんはそう思うんよ。だってなそうやって好き勝手にできるのは子供のうちだけなんやぞ。子供うちからあれもダメ、これもダメとか言ったらどんどん楽しみがなくなっていくやん」 芋虫男は今日一番の重苦しい溜め息を吐き出して、 「おっちゃんだったなぁ、ガキのときはブイブイ言わせとったけどな、大人になってからはそうはならんかった。不良だった頃は拳一つでよかったのに、社会人になった途端に立場が逆転してなぁ」 「それって長くなる?」 「聞いてくれないの?」 「じゃあ、聞くけど」 小学生の島田由美子にはまだ、小難しくてよくわからない話だけれど、家に帰ってもやることはないから芋虫男の話に耳を傾けた。 「大人になんぞならん、いつまでもガキのままでいいとか息巻いてたけど、おっちゃんもいつの間にか大人になっててな。そしたらおっちゃんはいつも下に見下されるようになってた」 それは子供の頃にはなかったこと、給料をもらって、仕事を請け負う以上はそれに伴う責任は何よりも重たかった。拳一つで解決できたことも、大人になれば通用しない日々の生活のためには仕事をしなければならないし、解雇になれば路頭に迷う。頭もよくなければ、学歴もない、子供頃に積み上げてきた悪行は重荷となって彼の足を引っ張る。 「まるで、雑草みたいやと思った。そこらへんにワラワラ生えとるのに誰も見向きもされんし、足蹴にされる。人間の都合で引っこ抜かれる、除草剤をまかれれば枯れる、まるでおっちゃんもそうやと思ったんよ。結局、人間の都合に振り回されるしな」 「それは子供の世界でも同じ……だよ」 むしろ、子供の世界のほうがシビアだと島田由美子はそう思った。大人の世界のように明確な上下関係がないぶん、一度でも仲間外れにされればそうとう苦しい。 「それに私、ずっと入院してたからどうしていいかわかんなくて、でも、お母さんには心配をかけたくないし、私、何も悪いことしてないのにみんな仲間に入れてくれない」 「そこで諦めるんか? 嬢ちゃんは入院してたことを言い訳にしてないか?」 「してないよ」 「いいや、してるな、おっちゃんはわかる。入院しとった苦しかったでも退院してしまえば
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