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 高校生の時、世理ちゃんは血の色が知りたいと言って自分の血でキャンバスに色を付けた。  その次は本当の緑が知りたいと言って、一週間ほど山に籠っていた。  傍から見ればただの変人だった。  中田さんとの会話を思い出す。 『自称愛の伝道師』 「世理ちゃん、今度は何が知りたいのよ……」  呆れたわたしの声に世理ちゃんは理解をしてもらえたと思ったのか、弾んだ声で答える。 「愛の色!」  後方にスプリングマットがあったなら、わたしは倒れ込んでいるに違いない。  愛の色なんて聞いたことが無い。 「だからって結婚って……」 「斑目はね、私に愛を教えてくれるんだって。おかしいでしょ。熱してすぐ冷めてしまう私は愛を知らないからって言うのよ。馬鹿でしょ」  わたしには、いい年をした大人二人が昨晩そんなことを真面目に話をしていた方が馬鹿らしい。  そもそも愛なんて人から教えられるものじゃなくて、自然と感じるものでしょ。
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