阨(苦しみ)・少年

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 夢を……見ていた。 (あれっ!? 何で夢だって言えるんだ……) 頭の中は疑問符だらけ。 でも、そう思わなければならない実状に僕は苛まわれていた。 何故此処に居るのかさえも判らないままで… ただ時の流れを呆然と生きていた結果だと嘆きながら暮らしていたのだった。  それを承知で、僕は救いを求めて夢の中にこの身を投じていた。 何が助けになるのかさえも解らないが、現実逃避だけは出来そうだからだ。 それだけ僕は追い詰められていたのだった。  広い広い雑木林の中をを僕は一人さ迷っていた。 (此処は一体何処なのだろう?) ふと、そう思った。 (やはり夢だ。そうでなきゃ彼処から抜け出せるはずがないんだから……) そう思いつつも、僕は歩くのをやめられずにいた。 (心配要らない。きっと何処かにたどり着くさ) 本当は怖いくせに解ったような振りをする。 そうだ。 やっと思い出した。 確か……此処は以前も来たことがあった。 そう思った途端急に元気になった。 夢だと理解しながらも、其処を目指して又僕は歩き始めていた。  鬱蒼と生い茂る木々の中を闇雲に進むと急に辺りが開けた感じがした。 其処にあったのは川だった。 (やっぱり此処か) 僕は何故だか納得した。  川の中に手をそっと伸ばすと、何かに当たった。 それは小さな石だった。 僕はそれを…… 僕はそれを、どうしたんだろう? 思い出せない…… でもそれは…… 僕が望んだ答えではなかったのだ。 僕が辿り着いた場所は悪夢の中だった……
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