阨(苦しみ)・少年

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 ……ガバッ。 目を開けると、何時もの部屋。 鉄格子のはめてある窓の向こうに目をやると、星が瞬いていた。 (まだ夜か) 布団の上に正座して遠い星を見つめた。  あの風景…… 前に何処かで見たことがある。 でも、それが何処なのか今まで解らなかった。 だけどさっき夢で……やっと思い出した。 あれはきっと荒川だ。 でも…… 僕は彼処で何をしていたのだろうか? そしてあの石で僕は何をしようとしていたのだろう? 解らない。 あんな夢を見るために彼処に入った訳ではない。 楽しいことが待っているはずだったんだ。 でもきっとそれは罪滅ぼし。 僕の深部にある何かがそれを見せてくれたのだろう……  この施設に入ってもうすぐ一ヶ月。 三ヶ月過ぎるとじきにマッサラ生活が始まる。 マッサラとは新入りのことだと担当の教官が教えてくれた。  この風景にも見慣れてきた。 本当は此処に居ること事態が未だに信じられないのだけれど。 此処は人生の待合室とよばれる施設。 少年院だ。 何故僕が此処に居るのか判らない。 ただ…… 誰かを殺したらしいと言うことだけは周りの人達が教えてくれた。 そう…… あの石だ。 あの石で僕は母を殺したんだ。 覚えてはいない。 何も思い出してもいない。 でもきっとそうなんだ。 皆が言っていた通り、僕は母を殺したんだ…… さっきまで僕の見ていた夢が、皮肉にもその答えを教えてくれていた。  十六歳未満の犯罪者は、少年刑務所ではなく、此処に入る場合もあるらしい。 だから僕は少年院収容受刑者と言われてるのだ。  だから僕は…… 夢だと承知で…… 此処から逃げ出したかったんだ。 あの夢が、僕の犯罪を立証する羽目になるなんて考えていなかったのだけど……
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