阨(苦しみ)・少年

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 夢を……見ていた。 又あの夢を見ていた。 広い広い雑木林の中をを僕は一人さ迷っていた。 (此処は一体何処なのだろう?) ふと、そう思った。 それでも僕は歩くのをやめられずにいた。 (何処かにたどり着くさ) 本当は怖いくせに解ったような振りをする。 そうだ。 此処は以前も来たことがあった。 僕が大好きだった清水さんの家族と一緒に見た博物館の横の道だ。 そう思ったら急に元気になった。 この向こうに彼女がいるかも知れない。 そんな気になって…… そう…… 僕が求めていた答えはこれだった。 ただ愛する人と過ごしたかっただけだったのだ。  鬱蒼と生い茂る木々の中を闇雲に進むと急に辺りが開けた感じがした。 其処にあったのは川だった。 (やっぱり此処か) 僕は何故だか納得した。  川の中に手をそっと伸ばすと、何かに当たった。 それは小さな石だった。 僕はそれを…… 僕はそれを、どうしたんだろう? 思い出せない…… それでも一つだけ思い出した。 その石には血が付いていたのだ。 (一体誰血だ……) 判ってる。 本当は母の血だって解ってる。 それでも認めなくない。 僕が母を殺した事実を。  ……ブォーッ!! 突然大きな音がした。 アレハイッタイナンノオトダ…… 解らない…… それでも…… 僕はもう、彼女とは過ごせないと…… 夢がそれを教えてくれていた。
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