阨(苦しみ)・少年

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 僕には帰らなければいけない場所がある。 母が其処で待っているんだ。 殺してしまった母ではない。 島に置き去りにされた僕を本当の子供のように育ててくれた母だった。 だから尚更言えない。 心配掛けたくないんだ。 島の母は、僕が本当の母と暮らしていると思っているはずだ。 僕が東京で再会したことを母に電話したからだ。 『暫く一緒に生活することになった』とその時伝えたんだ。 だから、敢えて……そのままでいようと思う。 何時少年院を出られるのか判らないけど、その時が来るまで誰にも言わないでおこうと決めたんだ。  僕にはやらなけいけないことがある。 実感はないけれど、あの夢が僕の罪を教えてくれたのだ。 だから…… 少年院でそれを償わなければならないのだ。 何時か少年院を出られる日がきたら、真っ先に母に会いに行く。 その後で教会で懺悔するつもりだ。 僕のことを子供のように可愛がってくれた神父さんの元で……  今は何月だろうか? 僕は何時此処を出るのだろう? 集団生活に果たして付いて行けるのだろうか? 三ヶ月なんて、きっとアッと言う間だ。 独居生活にはやっと馴れたけど、この後のグループで生活を考えると怖い。 仲間に上手く溶け込めるだろうか? 虐められたりしないだろうか? そんなことばかり考えてしまっている。  大好きな清水さんを忘れた訳ではない。 でも…… 自信が持てなくなってる。 僕はどうなってしまうだろうか?
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