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彼女は入社2年目でとてもよく動く女の子だった。
そして、愛想がいい。だからか、よく仕事を頼まれる。しかも、なんだかんだとこなしてしまう。
結果、仕事が増える。
必然的に、就業後は彼女と僕の二人だけの時間になった。
静まり返ったオフィスで、書類をめくる音と小気味いいリズムでキーボードを打ち込む音重なり合う瞬間が好きだ。
彼女に話しかける勇気が出そうだから。
右斜め後方にある彼女のデスクから、僕の姿は見えるだろうか。
休憩しよう、だとかなんでもいい。
何か話したい。
軽く深呼吸してから振り返る。
振り返った先には、当たり前だけれど彼女がいた。
息が止まる。
青白い顔でキーボードを叩く彼女は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
小柄な彼女が、さらに小さく見える。
だけれど、ここ僕が声をかければきっと彼女は笑う。
僕に気を遣って笑うだろう。
何があったの、なんて気安く聞いてはいけない。
それをする権利は僕にはない。
日頃から彼女との間に感じていた、壁に触れてしまった気がする。
だから、右斜め後方から聞こえる洟をすする音に気付かない振りをした。
泣いてもいいんだ。
だから、一人で泣かないで。
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