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第o章 心と名前を捨てた少年
「いいか。よく聞くんだ。お前はこれから『氷雨』と名乗るんだ。今までの名はもう忘れてしまってもかまわない。私がお前の名前を覚えておけばいいだけなんだ。」
まだ幼い美少年―氷雨―は頷く。彼には拒否権など無い。
「お前は体が弱いだろう?能力を使えばすぐ熱が出たり、倒れたりする。しかしそれは代償なのだよ。『心』を持ってしまったがためのね。どうせ私とお前は火山の実験により出来たコンピューター人間。他の奴らと比べて能力はずば抜けている。私は心を持たない。ロボット同然だ。しかしお前のように体が弱くない。私が苦しいと感じないだけかもしれないな。しかしお前は心を持っている。お前が苦しいのはその代償なのだよ。」
氷雨は頷く。心があるといっても、彼にはもう無いも同然だった。
「お前は火山に忠誠を、命を誓うんだ。必ず。」
氷雨は頷く。
電話が鳴る。
黒トリはその電話を取った。そして嬉しそうに微笑んだ。
「例の彼女は死んだらしいよ。―一人の子どもを残してね。」
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