第1章 少年と少女

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「ありえない・・・」 少年は客席から響く大歓声の中、そう小さく呟いた。 その少年はとても驚いた表情を浮かべながら視線を向ける。 その視線の先にいるのは1人の女性。いや、女性と呼ぶにはあまりに幼い。 見た感じ10歳程度であろうか、それほど幼い少女が立っている。 彼らが立っているその場所は、毎年国主催で開かれる実力者同士が闘い合う大会の決勝ステージの舞台。 冒険者、軍人、魔術師、国中の多くの実力者が参加する大きな大会。 勝てば、多くの賞金と、名誉を得ることのできる大会である。 そしてその中でも彼らが参加しているのは、18歳以下の少年少女たちが闘い合う部門である。 いわば未熟者たちが自分の実力を測るための部門であり、本当の闘いとは異なる部門。 少年もそれを理解していたし、こんな子供の部門にそれほどの実力をもった参加者がいるとは思っていない。 けれど・・・たとえそれでも、この異常には気づいていた。 たとえどれほど未熟者の集まりであろうと、こんな、このような幼い少女が勝ち上がってこれるほど皆、弱いわけではないということを。 何の力もない少女が勝ち上がれるほど甘い大会でないということを。 だからこそ、決勝戦のステージに立つこの少女の姿に驚く。 そして、恐る。この幼い少女に宿る力を、才能を。 観客たちはその異様な光景をただ楽しむ。2人の姿を見ながら大歓声を浴びせる。 17歳の少年と、10歳程度の幼い少女とのこれから行われる闘いを期待し、大歓声を浴びせている。
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