第四章

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「てめえら、太陽を離せ」 「いい加減にしなよ~、俺らほんとに怒ってるからね~」 茂みから出てきたのは、生徒会長と会計だった。 その後ろから、ぞろぞろと副会長、書記、そして水野と匠が出てくる。 しかし、大柄な生徒の振り上げた拳は止まることなく、俺は生徒会長らの姿を目に捉えながら左頬を殴られた。 「い”っ・・・!!」 もう少し早く来てくれていたら殴られなかったのに、と思いながら左頬をさする。 「生徒会長様・・・!会計様も・・・」 「皆様お揃いだよ・・・!すごーい!!」 状況を分っているのか、分っていないのか少し色めき立つ小柄な生徒達に生徒会長は目を向ける。 「お前らは何をしたか分ってんのか」 宝探しで生徒会長と話したときの雰囲気とは全く違った声色から、想像以上に怒っていることを理解した。 しかし、小柄な生徒達は生徒会長の一言にひるんだ様子もなく、生徒会長の足元を見ながら納得のいかない表情でぼそぼそと話している。 「僕ら別に、なにもしてないじゃないですかぁ・・・ここで見てただけだもんね」 「うん、なんか皆が迷惑してるっていうこの転校生を、あの人達がなんか勝手にボコボコにしだしたんだよね」 「そー、なんか生徒会の皆様も困ってるって聞いたし・・・たまたま僕らがいたっていうか・・・」 緊張感のない様子で言い訳をひたすら3人で話し合い、「そうだよね」など長ったらしい会話を互いに同調し合っている。 皆がいれば怖くない、とでも言いたいのだろうか。 「おい!てめえらが俺らに金渡してあの転校生ボコれっていったんだろうが!今更なに嘘ついてんだよ!」 「ふざけんじゃねえぞ!」 小柄な3人の会話に対し、大柄な生徒がかみつく。 「はあ!?僕ら別に言ってないし!ただ冗談で言っただけで、本気にしたのはあんたらでしょ!」 「そうだよ!こっちは冗談で言っただけなのに!そっちが勝手に勘違いしたことをこっちのせいにしないでよ!!」 「おまえらマジでなめてんじゃねえぞ!!なにが冗談だよ!!俺らが転校生を殴ってる間ずっと転校生にヤジ飛ばしてたくせによ!」 完全に内輪で揉めだし、その当事者である転校生の山吹も俺らもほったらかしになっている。 互いに責任転嫁しだしたところで、生徒会長があきれた様子で口を開いた。 「はあ、もういい。風紀ももうすぐ来るから大人しくしてろ」 生徒会のメンバーは山吹に駆け寄り、心配そうに背中をなでながら話しかけている。 「とりあえず終わったか・・・」 なぜか二回殴られた俺は、山吹がぼろぼろだったとは言え無事に見つかった安堵で気が抜けた。 その後、風紀委員と思われる生徒達がやってきて、揉めていた6人の生徒を連れていった。 そして、その後ろを俺らはついていき、宝探しのゴール地点に向かった。 「転校生の怪我は心配だけど、見つかって良かったね」 「あいつらやっぱ親衛隊なのかな~なんかすごい揉めてたのは意味わかんなかった」 「あいつらのせいで新歓中途半端に終わって、残りの宝箱見つけられてねえんだけど。食堂無料券4枚止まりじゃねえかよ」 「そういえばあと10分だったのにラストスパート探せなかったな」 今日はいろんな意味で疲れたせいで、すぐに寝れる自信しかないわ。 すでに悲鳴をあげている身体に鞭を打ち、ゴール地点まで足を進めた。
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