第四章

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風紀委員の後ろをついていくと、宝探しのゴール地点のゲートの近くに、白いテントが3張りほどある。そこがおそらく救護用のテントなのだろう。数人の生徒も、宝探し中に怪我をしたのだろうか手当をされている。 また、そのテントの周辺では他の風紀委員達が忙しそうに動き回っている。今の昼休憩の間に会場の片付けなどがあって休む暇が無いのだろう。 救護用のテント内に置いてあるパイプ椅子に座り、手当を待っていると先ほど案内してくれた風紀委員の生徒が救急箱を持ってきてくれた。 「すみません、手当すると言ったんですが、ちょっと他のところで手が空いていないみたいで。そっちの方に行かないといけないのですが・・・」 申し訳なさそうに救急箱を渡されたが、周りを見て分かるようによほど忙しいのだろう。 「いや、全然大丈夫ですよ。これくらい自分でできますから、ありがとうございました。」 救急箱を受け取り、さっそく左頬を消毒しようとすると、先ほど広場の前でマイクを持って立っていた生徒が近づいてきた。 「宝探しでは先輩達が迷惑をおかけしまして、すみませんでした。怪我はどうですか?」 転校初日の食堂で軽い自己紹介をして以来である生徒会庶務の歩クンである。 そういえば、山吹を探しているとき歩クンはいなかった気がする。生徒会メンバーが来たな、とは思っていたが、誰が来たかまで把握する気持ちの余裕もあまりなかった。 「なんか久しぶりだよな。怪我は全然たいしたことない。2回殴られたからすごい痛いけど。」 「そうですか。生徒会と風紀委員が合流したのにもかかわらず怪我をさせてしまってすみません」 食堂の時も思ったが、相変わらず同い年と話している感じがしない。 歩クンは、近くにあったパイプ椅子を俺の真正面に置いて座った。 「別に歩クンがそんなに謝る必要ないだろ。そういえば、転校生の山吹探すときいなかったけど一人だけ上に残ってたのか」 「生徒会全員が新入生歓迎会の方を放っておいては、何かあったときに指示をする人がいなくなってしまうので、自分だけが残ったんです。先輩達は山吹さんが心配でそれどころではなさそうでしたし」 本当に同い年なのかと思うくらい冷静な判断をして動いてるんだな、と思わず感心してしまった。自分自身も山吹がいないと聞いた時慌ててしまったし、そういえば堀内とか高橋とか、楠木も結構冷静に行動していた気がする。 「まあ、たしかにそうだよな。いてっ」 あいつらもすげえな、と感心しながら左頬の殴られた痕を消毒しようとしたら、思った以上に消毒液がしみて痛い。 痛さを我慢しながらもたもたと消毒していると、見かねた歩クンが消毒液を俺の手から奪い取った。 「貸して下さい」 痛い痛いと声をもらす俺を無視して、歩クンはてきぱきと消毒をする。 左頬には大きめの絆創膏が貼られ、完全に情けない姿になってしまった。 「先輩達から聞きました。やっぱり山吹さんは生徒会の親衛隊のせいでこのようなことに巻き込まれたと」
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