第四章

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風紀委員長の顔が目の前に迫った瞬間、咄嗟に右手で風紀委員長の顔を真正面からバスケットボールと同じ要領で掴んでしまった。 「あ、すんません…」 慌てて風紀委員長の顔から右手を離し、謝る。 あまりにも顔が近くに迫ってきたため、右手でガードの意味も込めて相手の顔を掴んでしまったが、流石に失礼なことをしてしまったと思う。 しかし、結局この風紀委員長とやらは何がしたかったんだ… 「くく…反射神経すげえな」 仕掛けた張本人は腹を抱えて笑っており、その隣の歩クンは唖然とした表情でその姿を見ている。 副委員長は呆れた顔で「いい加減にしなよ」と笑っている風紀委員長に話しかけている。 あー、笑った、と一通り笑ったらしい風紀委員長は、先ほどまで歩クンが座っていたパイプ椅子に腰をかけた。 「警戒しすぎなんだよ。そんなに警戒されたら逆になんかしたくなるだろうが」 「なんかってなんすか…、急に顔が近くに迫ってきたから凄え焦ったじゃないですか…」 完全に呆れたという視線を送り、肩の力を落とす。 「九条くんごめんね。桑原こういう意味わからないところあるから気をつけてね」 爽やかに副委員長から謝られるが、その忠告はあまりにも遅すぎないか。 「それで・・・俺に聞きたい事って何ですか?さっきも言ったとおりたぶんあんまり話せることないですよ」 目の前に座っている何を考えているか分からない風紀委員長とやらから早く立ち去りたくて話を進める。 風紀委員長の顔をちらりと見ると、初対面の先輩の顔面を掴んでしまったのに怒った様子もなく、ただにやにやしている。 「だろうね。たぶんこの学校のこともあんまり把握出来てないと思うし」 先ほどと変わらずにっこりとした表情で副委員長は続けて話す。 「外部の転校生が2人も来るなんて珍しいしちょっと話したくてきちゃった。あの馬鹿な生徒会みたいに食堂で堂々と会いに行くなんて出来るわけ無いしね」 「え、ちょっと・・・」 目の前に生徒会メンバーである歩クンがいるのにも関わらず、あまりに気を遣わない物言いに少し焦る。 この2人は生徒会の人たちに怒っているのか? 確かに今日は風紀委員達が準備とかでばたばたしてるし、今回の山吹達のハプニングでより大変だったとかなのか? だったらなんで歩クンが1人の時にわざわざそれを言いに来るんだ、と少しムッとする。 「さすがに言う相手間違ってないですか?そこは歩クンの先輩達に言うべきでしょ・・・それに歩クンは風紀委員の方達に迷惑かかってるのが分からないような奴じゃないですよ」 な、と歩クンに目を合わせると、歩クンは風紀委員長と副委員長に顔を向けこくりと頷いた。 「はい。会長からは今日の放課後に今後の対応について話し合うからという風に聞いておりますし、このまま風紀の方々にもご迷惑をお掛けしないようにしますので・・・今日はすみませんでした」 「ほら、先輩方もそんなに怒んないでくださいよ」 迷惑をかけられたであろうことは分かったが、なんでここまで生徒会に当たりが強いのかわからない。 とりあえずさっさとこの気まずい雰囲気をどうにかしてほしい。
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