第1章 秘密の花園

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 うっ、それはいい時間潰しになったようで。  立花君はちょいちょい意地悪な言い方をするんだなぁ、と私は少しだけ口を尖らせた。 「それに」  と、立花君は背伸びをしながら立ち上がった。 思ったよりも背が高くて、私は口を開けたまま見上げる。 腕とかも長くて、肩や首をごきごき、と鳴らせた立花君は続きを言う。 「栞の、お礼」 「え、それは私がたまたまこの本借りたからだし、お礼なんて」 「いや、この栞さ、俺が作ったやつで失くしたくなかったから。偶然でも助かった。さんきゅ」 「……はあ」  ため息みたいな返事をしてしまった。 というか、ため息もつきたくなるほどに立花君の表情がわからなかったためである。 多分嬉しいのだろうけれど、無表情というか、眠そうというか。 言葉と表情が合ってない、という感じ。
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