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――背は高いけれど少し猫背で、前髪が長くて目があまり見えなくて。
無口ってわけじゃないけれどあまり喋らなくて、その声はとても重低音で。
私、蝶野千草(ちょうのちぐさ)の前の席に座る男子が、とてもいい匂い、と気づいたのは、女子高生一年目の、五月の事だった――
「千草、おーい、ちーぐーさーっ!」
「……え? あれ? もう放課後?」
とっくに先生も教室から出てるよ、と言う友達の相沢亜希(あいざわあき)は、教室の真ん中の一番後ろの席にいた私を呼んでいた。
というか、亜希の顔が私を覗き込むように凄く近くにあったので、ぎょっ、と気づいた。
きょろきょろ、と教室を見回すと、クラスメイトの半分はもう部活動に行ってしまったのかいなくて、残ったクラスメイト達もその準備をしているようだった。
そんな亜希も部活動に行く前で、すでに鞄と大きく四角いスポーツバッグを肩に掛けている。
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