第1章 秘密の花園

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 図書部には批評ノートなるものがあり、毎回読後に記入しなければならないのだ。 私はこれが苦手で、面白かった、くらいしか書けないでいる。 もう少し詳しく、なんて思うけれど批評し慣れた先輩達のようにはなかなかいかない。 前にも、楽しかった、オススメ、なんて書いてみたけれど、ダメ出しをくらってしまったのは言うまでもなく記憶に新しい。 というか、一昨日の事だったっけ。 今回の本は、少し泣ける、でも楽しくて面白い、って感じかな、と頭の中で記入してみる。 ああ、先輩の呆れた顔が目に浮かぶ。 ボキャブラリーが貧弱過ぎて別の意味でも目から涙が零れてきそうだ。  ……野さーん。  と、私は、すん、と鼻から息を吸った時に目を開けた。  何だろう、いい匂い……。  本から少しだけ甘い匂いがして、私は顔を上げて一枚、ページを捲る。 するとそこに綺麗なピンク色の花が咲いていた。
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