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正確には栞だ。
そういえばこの本にスピン(栞の紐)はついていたけれど、途中で切れてしまっていた。
割と古い本だからしょうがないとは思うけれど、図書室の本だし大事に扱ってほしいものだ。
だから、この栞が挟まれていたわけでもあるのだけれど。
栞に咲いている押し花がとても綺麗。
「何の花だろ……」
「アルストロエメリア」
「へぇ、凄い名前なんだね……って、え?」
と、私が声の方を見ると、前の席の椅子に男子が横向きに、廊下の方を向いて座っていた。
私一人しか残っていなかった教室に、いつの間に来たのだろう。
というか、すぐ前にいるのに気付かないなんて、私どうにかしてる、と自分をツッコミながら口をぱくぱく、とさせていると、また男子が喋った。
「それ、俺の栞」
そう言った男子は、横目を本に落とす。
凄い重低音で、静かな声でびっくりした。
目が隠れるくらいの長い前髪に、少し猫背の男子の名前は。
「た……立花(たちばな)、くん」
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