110人が本棚に入れています
本棚に追加
「平気。ぼーっとしてたし」
確かに、と思った。
横顔から正面に顏を向けた立花君は、ぼー、っという擬音語がぴったりの顔をしていたからだ。
少し眠そうな、力が抜けているような、興味がないような。
「で、栞だけど」
「あ、はい。どうぞ」
「ん」
立花君はアルストロエメリアの押し花の栞を受け取る。
その時、立花君の指に切り傷のようなものがあるのに気付いた。
血は止まっているみたいだけれど、中の肉的な色が見えて痛々しい。
しかし、どうして立花君は自分の栞を私が持っているとわかったのだろう。
超能力者?
なんて、現実味がない事はわかっているのに首を傾げてしまったけれど、そんな部活もあったよね、と思い出す。
「その本、良かっただろ」
学ランの上着を着ていない立花君は、白いシャツの胸ポケットに栞をしまいながら聞いた。
最初のコメントを投稿しよう!