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今世紀始まって以来、これほどのビックリフェイスを零斗は見たことがなかった。実菜は男はエロ本を買う生物だとでも思っていたのだろうか。あらかた間違いでもないところが、ちょっと悔しい。
一時だけ機能停止した後に、実菜は納得したように「あ、そうかぁ」と手を叩き、ビックリフェイスを改める。
「最近はネットでなんでも拾えるからねぇ。買う必要はないってことか」
「どんな納得の仕方だよ。俺がそういうの大好きだとでも言うのか、俺が性に埋もれた変態だとでも言うのか」
「『変態れいとー』だからねぇ。エッチな画像で嬉しがっちゃう」
「俺は、今の会話の話題を変えてくれたら、非常に嬉しがるんだがな」
「じゃあ、レモンの話にするぅ?」
どうやら実菜は話の脈絡とやらを全くと言っていいほど理解していない。ということに零斗は最近になって気付いた。そもそも日常会話に脈絡が必要か。と問われれば、返答出来る自信は一ミリもない。つまり、零斗はこれに食らいついていくしかないのだ。どうしても食らいつけなければ、その事柄についてどう話すのかを逆に問えばいい。
「……レモンでどんな会話をするんだ?」
「例えば、最近はレモンの価格が高騰してるねぇ。とか」
「今から銀行で事件起こるってときに金の話すんのかよ」
「銀行?」
「ああ、銀行だ。瀬羅から連絡こなかったか?」
零斗の質問に反応して、実菜は堂々と胸を張った。その勢いで、ぽよんという効果音が簡単に当てはまってしまいそうな揺れを見せた双子山を零斗は見たわけだが、こころなしか偉そうな表情に若干のムカつきを覚えたことで、やましい気持ちはすぐに破壊されてしまった。
「驚くなかれ。昨日、充電するのを忘れてスマホが電池切れなのだぁ」
テッテレー!
……そろそろ殴ってもいいだろうか?
「まあ、そんなわけで、事件の内容を教えて欲しいなぁ」
「……」
ムカつく表情から一変した可愛げフェイスをこれでもかと近づけてくる実菜に零斗は逆らうことが出来なかった。従って、先程の瀬羅の言葉を繰り返すしか道はない。胸といい、可愛げフェイスといい、巨乳美少女の武器というのは本当に最強だな……。と思ったところで、零斗の奥より浅いため息が零れた。
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