0人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、この世界は現実だ。なんでも出来るイメージのある魔法だが、現代科学以上に不便でもあり、理不尽でもある。というこの考えは、魔法の使えない「一般人」である科学者の卑屈。だが、その考えも、あらかた間違っていない。魔法を操る「魔法使い」にも、なんでも出来るイメージがある魔法にも不便はある。その根源は、『固有魔法』とか呼ばれる、魔法使いは一人につき一つの魔法しか使えない。という世界の条理だ。火を出せる魔法使いは水を出せないし、読心術(マインドハック)で行動を読みながら空間移動(テレポート)して近づき至近距離で隕石(メテオ)発動なんてバトルもありえない。その上、空気中に滞在するとされる『魔力』がなければ、魔法の使用は不可能。となっては、前述の卑屈に対して首を縦に振ってもおかしくはない。
それでも、便利な魔法はとことん便利である。
例えば、人間の未来の行動を読むことが出来る未来予知(フューチャー)。これはその効力より、未来に起こりうる殺人事件すらも予知してしまうという、警察にとっては超絶に便利な魔法である。
その便利っぷりたるや、警察署で未来予知を行動の要とした課が出来てしまうほど。容疑者の行動を予知して、事件の起こりうる現場を警備するのだ。その課の名は、
日本警視庁宮崎県警川南警察署魔法警備課「魔法闘牙(マジックファング)」
零斗や瀬羅の配属される特殊な警備課である。
零斗はスマホを耳元へと戻し、「了解した。じゃあ、九時前に出ればちょうどいいか……」
『えっ? 二日酔いの状態でか?』
「だから、俺は酒なんか呑まねぇんだよ! 一杯も一滴も呑まない。だから二日酔いにもならないんだって!」
未成年の警察官という立場上、そのような疑惑は自らの首を絞める。ということもあり、先程と全く変わらぬ拒否語を零斗は電話越しの瀬羅に向かって思いっきり投げつける。
『リアクション変わんないから、面白みがないな……』
悪かったなぁ、おい。
「いいんだよ、事件の連絡なんだから」
『だからこそのハッピーだ』
おそらく電話の向こうの瀬羅は、それはそれは楽しそうな表情で言い放ったのだろう。電話越しでも、嫌というほど伝わってくる。不愉快すぎて吐きそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!