ベイビー・アイ  神谷信二

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2014年8月25日。 「キャハハ」 娘のオムツを替える時、必ず娘はニコニコと笑いかける。 何故こんなにもニコニコしているのだろう。 その笑顔に幸せをもらっておきながら、夜泣きもほとんど無い事を時々疑問に思う。 夫は役所で働く公務員。 24歳になったばかりの私は、生後五ヶ月の娘と夫が帰宅するのを待っている。 夕方はニュースしかやっていないが、静かな時間が苦手な私は必ずテレビをつける。 しかし、テレビをつける度に流れるのは暗いニュースばかり。 自分の子供に暴力を振るったり、食事を与えなかったり、殺害したりするニュース。 そんなニュースを見る度、『あぁ、こんな鬼のような人間が現実に居るんだ』と5年前までは思っていた。 まさか私がその鬼になるなんて、当時の私は思っても居なかっただろう。 望まない人からの妊娠だとは言え、お金が無いからとは言え、殺人は殺人。 どんな言い訳をしても許されない行為。 5年前の8月、私は生後三ヶ月になる実の娘を殺害した。 本当に可愛い子だった。 母乳もあまり出ない私の乳房をしっかりと握り、生きるために必死に飲んでいた。 私を見つめるキラキラとした目に曇りは全く無く、ぼんやりとではあるが幸せな未来を見据えていたはずだ。 まさか自分の親にその未来が奪われる事など想像もしていなかっただろう。
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