壬生狼

2/3
前へ
/26ページ
次へ
容易にうちらを捕まえた彼ら。 その彼らの羽織る隊服。 浅葱色、ダンダラ模様の羽織。 京都の人間や無くても知っとる人は大勢おる。 ──『新選組』。 その浅葱色の羽織は、田舎武士の多い壬生狼にはお似合いや。 うちは新選組について記憶の中を探る。 (さっき『壬生狼』呼ばれとった。ということは京都に来て間もない頃やから…文久3年…) 「総司、捕まえたのは女達だけか?」 低い、良く通る声にさっきの怒号が重なる。 (総司? ほな、こん人が沖田 総司であれが土方 歳三…?) 「すみません、男のほうは足が早く、人混みで見失ってしまいました」 総司と呼ばれたうちらを捕まえた人は、少し申し訳なさそうに話す。 (あの二人は逃げられたんや。良かった…) 「まぁいい。こいつらだけでも屯所へ連れて行け」 やはり『鬼』と言われるだけあるな。 非力な女子2人でもあれだけの殺気を出すんや… これはとんでもないことになりそうやな…
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加