助け船

4/4
前へ
/26ページ
次へ
「──という訳で、この子達を預かって欲しいんだ」 慶喜はんはあらかた事の流れを話さはった。 「慶喜はんの頼みなんやったらわては断りれまへん。そやけど、こん子らはここがどないな場所かわかってはるんか?」 視線を慶喜はんからうちらに移して言わはる男の人に、うちと茉莉花は顔を見合わしてから首を横に振る。 「ここは置屋どす。遊女が寝起きする場所や」 「ゆ、遊女!? 遊女って…」 茉莉花は最後に赤くした顔を隠す様に俯く。 「わては無理に働けと言うつもりはありまへん。それに、働いてもらうとしても新造として働いてもらいます」 「新造…?」 「そうや。遊女、姐さんに付いて身の回りの世話をしたり、名代を務めたり、芸事を習ったりするんが新造や」 「なら、うちを新造として働かして下さい。ただお世話になるだけなんは気が引けますさかい」 「み、美桜ちゃん?!」 驚く茉莉花に笑顔で話す。 「新造は茉莉花が心配しとる事はせんでええんやで」 「え…?」 「心配しなくていいよ。姐さんの世話と雑用だけだから」 心配の元がわかったんか、慶喜はんも茉莉花に説明してくれはる。 安心したように息を吐いて、顔を上げた茉莉花。 「…なら、私も働きます!」 すると男の人は優しく、顔をあげ、と言うた。 「そんなら働いてもらいまひょ。わてはここの主人、藍屋秋斉いいます」 「美桜どす。これから宜しゅう頼んます」 「茉莉花です。宜しくお願いします!」 「こちらこそ宜しゅう頼んます」 こうしてうちらはここ、藍屋でお世話になることが決まった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加