11人が本棚に入れています
本棚に追加
「──という訳で、この子達を預かって欲しいんだ」
慶喜はんはあらかた事の流れを話さはった。
「慶喜はんの頼みなんやったらわては断りれまへん。そやけど、こん子らはここがどないな場所かわかってはるんか?」
視線を慶喜はんからうちらに移して言わはる男の人に、うちと茉莉花は顔を見合わしてから首を横に振る。
「ここは置屋どす。遊女が寝起きする場所や」
「ゆ、遊女!? 遊女って…」
茉莉花は最後に赤くした顔を隠す様に俯く。
「わては無理に働けと言うつもりはありまへん。それに、働いてもらうとしても新造として働いてもらいます」
「新造…?」
「そうや。遊女、姐さんに付いて身の回りの世話をしたり、名代を務めたり、芸事を習ったりするんが新造や」
「なら、うちを新造として働かして下さい。ただお世話になるだけなんは気が引けますさかい」
「み、美桜ちゃん?!」
驚く茉莉花に笑顔で話す。
「新造は茉莉花が心配しとる事はせんでええんやで」
「え…?」
「心配しなくていいよ。姐さんの世話と雑用だけだから」
心配の元がわかったんか、慶喜はんも茉莉花に説明してくれはる。
安心したように息を吐いて、顔を上げた茉莉花。
「…なら、私も働きます!」
すると男の人は優しく、顔をあげ、と言うた。
「そんなら働いてもらいまひょ。わてはここの主人、藍屋秋斉いいます」
「美桜どす。これから宜しゅう頼んます」
「茉莉花です。宜しくお願いします!」
「こちらこそ宜しゅう頼んます」
こうしてうちらはここ、藍屋でお世話になることが決まった。
最初のコメントを投稿しよう!