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(…このまま逃げ切れるやろうか)
うちも茉莉花も、決して足は早うない。
一抹の希望しかないけど走るしかあらへん。
「逃がすなっ! 残らず引っ捕らえろ!!」
後ろから男の人の物凄い怒号が聞こえる。
あん人らに捕まってもええことは何もないやろう。
(人混みでうまいこと逃げられればええんやけどな…)
そんなことを考えた直後。
「捕まえた」
「きゃっ!」
殆ど同時に何処か爽やかな男の人の声と、茉莉花の悲鳴が聞こえた。
茉莉花と繋がった腕のせいで、全く前に進む事が出来ひん。
恐る恐る振り返ると、うちと繋いでないほうの茉莉花の手を、黒い『ポニーテール』姿の男の人が掴んどった。
一見、優しそうな顔をしてはる人やけど、うっすら漂う殺気と腰に刀を差してはる男の人の前では成す術無く、大人しく従って、先ほど走り出した場所へと連れ戻された。
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