眼鏡男子心酔女子

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「いつもやってもらってるし。たまにはやらないと」  気付けば、栗生君はいつも黒板を消していてくれる。きっと私の背が低いので、彼なりに気を遣ってくれているのだろう。  自分の手の届く範囲内を、滞りなく消していく。 「毎回毎回、先生も大変だよね」  きっと、あーちゃんならこう言うだろう。 『は? それが仕事じゃん?』  想像しながら笑いを堪える。次いで背伸びし、上へと右手を伸ばした。 「ととっ」  バランスを崩しそうになったので、手形が付いてしまうが左手を黒板に添える。  リンゴ何十個分かの体重をかけ、思いっきり腕を伸ばした。 「おにょ?」  支えきれずに体ごと傾く。  はらら? 私、リンゴ何個か分、増えた?  スローモーションで流れる視界。 「篠田っ!」  聞き覚えのある声に顔と…… 「わっぷ……!」 「わーっ! 栗生君っ!」  同時に黒板消しも向けてしまった。
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