眼鏡男子心酔女子

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 何と言う事でしょう……チョークの粉まみれの黒板消しが、見事に栗生君の頭の上に乗ってしまったではありませんかっ!  慌ててスカートの両ポケットに手を突っ込む。 「あれ? あれれ? ハンカチ……」  しまった! 上着のポケットだーっ!  一人、百面相していると固まっていた栗生君が不意に眼鏡を外し、 「……喧嘩、売ってんのか?」  低い低い、それはもう完璧に怒ってますという声で私を見下ろした。  初めて見た素顔……いや、裏顔? 「いえ……そんな……」  動揺で後ずさると、教壇から足を踏み外した。 「はにゃ!」 「おいっ!」  伸ばされた手をどうにか掴んだけれど、勢い余ってひっくり返る。 「……いたた」  あれ? でも、覚悟していたよりは……痛くない? 「お前……いい加減にしろよな」  何故、下から声が?  血の気が引いていく中、勇気を出して視線を落とした。
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