くだん

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2008年。俗に言われるリッチマンの宣言により、KUDANの定義を動物とすることが結論付けられた。 それ以降、バイオテクノロジーの進化過程において、KUDANは重要な役割を担う。 2012年からは再生医療の分野での研究が進み、臓器養殖の器として注目を浴びる。 2020年。ある男性の遺伝子を組み込んだKUDANで養殖された腎臓が、男性へと移植された。手術は無事成功した。 その後も技術の進歩により、KUDANによる臓器養殖はより安全で高い成功率を誇るものとなった。 今日の日本においてもその技術は応用されている。しかしながら、KUDANの生態については未だ謎であることが多い。 そして僅かながらの詳細についても、国民には伏せられているのが現実である。 因みに、妖怪"くだん"の伝説には、くだんは死の前にこれから起こる世の不吉を予言するとある。 これは事実か甚だ疑問だが、かのオレクも死の直前に最初にして最後の言葉を発したとされている。 以下がその内容である。 「私はヒトではないが、ヒトがいずれ私となる」 この発言について、真偽は全く不明である。 何しろオレクの存在自体、記された文献は一切一般に公開されていないのだから。 オレクの突然の出現から60年余り。その存在は歴史から葬られつつある。 この不思議な生物により、我々人類は多大な恩恵と功績を得た。 しかし、人類はこのまま利益だけを享受していけるのだろうか。 もしかすると人類は、とても赦されない禁忌を犯してしまったのかもしれない。 ・押野泉治『くだん』
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