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電灯が点滅する。
カビた匂いが充満する部屋の中で、柏木務は四肢を投げ出し倒れこんでいる。
荒い息を上げ、霞む目で天井を見つめる。
腹部からの出血は身体を伝い、床に広がっていく。
遠のく意識の中で、柏木はあることに気が付く。
重要なのは、"誰が行った復讐"か。ではなく、"誰が誰の為に行った復讐"か。それだったのだ。
その事実がどれ程重大で恐ろしいことなのか、柏木は深く思い知る。
自分以外の者に、真実を告げられないことを悔やみながら、柏木の思考は回転を鈍めていった。
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