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病院から家に帰る途中、俺達は無言だった。
でも、その間ずっと淳は俺の手を握ってくれていた。
「ゆず、大丈夫か?ベッド行く?」
「ううん、大丈夫。ソファ座る。」
「お茶のむ?」
「うん、ありがと」
優しい優しい淳の子供が自分のお腹の中にいると思うととても嬉しい。
勿論わからないことだらけで不安だ。
でも、それ以上に嬉しいという気持ちの方が大きい。
俺は淳に家庭はあげられても家族を増やしてあげる事はできないと思っていたから。
診察を終えてから、ほんの少しの時間しかたっていないけどもう自分の想いを決めた。
いや。もう、診察を受けた時から決めていたんだ。
「はいどうぞ」
「ありがとう」
俺の身体を思って作ってくれた少しぬる目の緑茶。
ほら、こんなにも優しい。
「ゆず」
「ん?」
「あのな、俺と結婚してくれないか?」
「ふえっ?!」
「実は、前々から思ってたんだ。お前の体調が悪くなってから、おかしいなって思って会社の先輩に相談したんだ。そしたら、妊娠してるんじゃないかって。」
「そ、そうだったんだ……」
「でな、それと同時にあと数ヶ月すれば同性間でも結婚できるようになるってきいたんだ。今までは結婚とか関係無しにゆずとずっと一緒にいるって決めてた。でも、やっぱり結婚できるなら事実だけじゃなくて形として、ゆずと一緒に居る事が認められるようになりたいって思ったんだ。」
淳の言葉が胸すっと入ってくる。
嬉しくて嬉しくてたまらない。
感情が抑えきれずに大粒の涙がぼろぼろ頬を伝う。
「だから、ゆず。俺と結婚してください。」
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