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そんな噂話が飛び交う人の波に、たまたまその娘が居合わせた。
「え?卯思議高校に入学したら、恋人が出来る……」
分厚い参考書を抱えた少女は、人の波に流されながら噂話の断片を聞いたのだった。
次の日。
「ねーねー、聞いてよ!!
私……卯思議高校を受験する。」
小野道妹子(おのみちいもこ)の突拍子もない発言を聞いて、親友の夏目友子(なつめともこ)と南野カナ(みなみのかな)は固まっていた。
そんな、親友二人の様子を気にする事もなく、妹子は話を続けた。
「何かね、卯思議高校に入学したら、彼氏出来るんだってーー、中学三年間…いや、産まれてからずっと彼氏のいない私はね、この伝説に望みを託すのよーーー。」
クラス全員の視線が集まる中、小野道妹子は天井に、いや、空高く腕を振り上げガッツポーズをした。
何時も冷静な南野カナが落ち着かせようとする。
「妹子、恥ずかしいよ、みんなに注目されてるよ!!
それに、妹子、鳳凰高校はどうしたのよ?もういいの。」
「うん、もうどうでもいい、私は、恋がしたいのよ。」
少しおっとりしている夏目友子も呆れて言った。
「でもね、妹子ちゃん…彼氏が出来たって恋してるとは限らないんだよ。」
妹子は目を丸くした。
「え!?」
「ちょっと、友子……怖いこと言うのね、友子あんた…意外に大人ね。」
「えへ、そうかな?」
何故か友子は照れていた。
「いや、ほめた訳じゃないけどね。」
カナは冷静に言う。
「二人とは違う高校になっちゃうけど、私…頑張るからね。」
妹子は少し寂しげに二人に話した。
「あら、妹子、私だって彼氏欲しいわ、だから、受けるわよ卯思議高校を。」
腕組みをしてカナが強い口調で言った。
続いて、友子もゆっくりと呟く。
「私も彼氏…欲しいな……」
妹子は二人に抱きついた。
「ありがとう、二人ともー。」
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