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シズカは、米本に説明を求めた。
「結局、ドジコに、何があったの?」
米本は、疲れた様子で、部屋の椅子に座る。
「統創天会の中級会員が、ドジコが能力を使う処を目撃、
それを利用出来ると考えて、
短絡的に拉致し、本部に連れ込んだ。
ところが、いつもよりずっと早く、大きな騒ぎになってしまい、警察が食いついてきた。
警察からの追求を避けるため、証拠であるドジコを生きながらに小間切れにして、処分しようとした。」
誰も、何も言わない。
米本は、話を続けた。
「警察が動き出すまでに、もう、言い訳などでは、説明できないようなことをドジコにしていた、というわけね。
相手は畜生に劣るエベルキン人だらけだし、連れ込まれた時は意識がなかったし。
ドジコも、意識が戻ってから、何人か大怪我させる大立ち回りをしたみたい。
今までも似たようなことをしていたらしいけど、こんなにすぐに警察に見つからないから、あのような人体分割を行って、隠蔽し続けてこられたようね。
都内の行方不明者の大半は、あそこで亡くなってるみたい。そこはまだ調査してる。」
スラリは、寝ているドジコを指差した。
「なら、このドジコは?」
「瀬織が、自分の体に、ドジコの意識を移し代えた。」
ナデシコが、眉をしかめた。
「そんなことが出来るのですか?」
「ドジコが死ぬ間際なら、出来る。
死亡したときに出るドジコの魂を、瀬織の体を使って受け止める。
成仏を邪魔するわけで、罰当たりなことなのだけど。
瀬織は、自分の意識を消して、体を譲ったはず。」
スラリは、頭を抱えた。
「そんな馬鹿なことが出来るのか。」
病室のドアが開いて、ハカセが入ってきた。話が聞こえていたのか、
「馬鹿なものか。
それが仙人だ。
気を扱うスペシャリストである仙人には、魂を移し変えるのは、パソコンのデータを移し変えるようなものだ。」
と、スラリに言う。
米本は、頭をかいた。
「それほど簡単でもないし、失敗も多いのよ。」
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