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瀬織は天風を止める義理はない。
だから、
「陣平が戻ったら、天風を片付けに行くけど、すぐに何かする気はない。
エベルキン大国を、助ける義理はないし。
…
正直言えば、私が殲滅したかったくらいだしね。
統創天会は、もはや、母さんが合法的に潰し始めてるだろうし。」
と、くやしげに言った。
米本は、うふふ、と笑う。
「そうそう。そういうのは、これからあなたの仕事ではない。」
瀬織は気がついた。
「母さん…
その言い方からすると、
ダーナを使って、逃げた統創天会の幹部達を、暗殺し始めたわね?」
ダーナは、国内の殺し屋の組合のようなもので、しばらく前から、AILとの内通をしている。
米本は、明確には答えなかった。
「いずれにしても、日本としては、もう少し様子を見る。
頼むことができたときには、考えてみて。」
米本は電話を切った。
瀬織は、チャーハンを食べ出した。
そうは言ったものの、日本として、何らかの行動を起こす時には、出番があると、瀬織は覚悟している。
エネルギーを補給しておく必要がある。
米本は忙しかった。
エベルキン大国からの移民は、破壊を免れた小舟で、無茶な渡航を試みる者くらいで、日本には多くは渡っていない。
世論は、救済を推奨する。
現実は難しい。
エベルキン政府がないので、自衛隊が行ってよいかすら、わからない。
メリアン合衆国軍が主導で、臨時政府をとにかく建てた。
生き残っている政治家を集めたのだ。
南部総理は、この臨時政府に、日本からの助勢を申し入れたが、答えは、
「日本人の手は借りない。
自衛隊が入国することは、許さない。」
というモノだった。
骨の髄にまで染み込んだ反日の気質は、非常時にも、判断を狂わせる。
このとき、襲撃が発生してから、実に3週間が経過している。
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