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陣平が消えてから、1ヶ月が経つ。
まだ、陣平は再生する気配はなかった。
再生は、仙界に自分の元となるデータを保管しておき、地上に自分のコピーを作り、アバターとすることであり、大量に気を集めなければならない。
気を集めるなら、瀬織の近辺で再生するだろうと、瀬織と米本は考えている。
ドジコは、AILの研究室で、パソコンの画面を見ながら、ため息をついた。
研究室には、ベリーしかいない。
モヤシは、出かけている。
ベリーは、スパイだったメガネの代わりに補充された人員で、メガネに劣らず優秀である。
中近東の人種で、濃い顔立ちだ。
ベリーは自分の机から顔を上げ、先輩であるドジコに
「どうしました?」
と、笑って声をかけた。
ドジコは、腹をさすった。
「来ないの。」
「ああ、あれ。
ずれるのも、仕方ないでしょう。」
ドジコは、意を決したように、立ち上がった。
「薬局行ってきます!」
「え、え?」
研究室のドアが開いて、ハカセが入ってきた。
実験室を出て、ここで一息入れる気で来たのだ。
「ドジコ、コーヒー淹れてくれないか?」
「薬局行ってきます。」
「なんだ、調子悪いなら診てやるぞ。」
ハカセは、各種の医師の資格もある。
ドジコは、部屋をウロウロしながらうなる。
「んー、んー、」
「便秘か?」
ハカセは、冷やかした。
ドジコは、
「ハカセ、口は固いですよね?」
と、思い詰めた顔で言う。
ハカセは、ヘラヘラした。
「もちろんだ。」
ドジコは、ハカセの小さい肩を正面からつかんだ。
「出来たかも。」
「?何が?」
「あかさま」
「あか?さま?」
「子供。生理こない。」
「う?あ? 誰の?」
「陣平さん。」
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