滅亡

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ドジコは、相手にせず、店に戻ろうとしていた。 男の1人が、 「おい、」 と、声をかける。 ドジコは、振り向いた。 その顔に、スプレーを男は噴霧した。 「ぷ、ぷっ!」 臭いで、以前にもかいだ記憶がよみがえる。 クロロホルムと、何かが混合している。 「げほげほっ」 催涙薬も混ざっているらしく、ドジコはむせた。目も開けられない。 「よしっ」 あっという間に、クルマにドジコを押し込むと、走り去った。 埠頭に何とか先んじてついた瀬織は、近づく天風の気配を感じていた。 船の見える位置までクルマを乗り入れ、鉄のコンテナが並ぶ合間に停車した。 埠頭の入口から、2人乗りのバイクが入ってくるのが見えた。 「あれか。」 その時、瀬織の電話が鳴った。 「?なに?」 シズカからだ。 嫌な予感がして、すぐに電話を取る。 「シズカ、何かあった?」 シズカが慌てている。 「ドジコが拉致された!」 「え?」 「目撃者がいたから、警察も動いてる。」 「店にいたんじゃ…」 「店の外の、揉め事に首を突っ込んだらしい。 警察が、クルマの特定ができたら、アネサンにも連絡がいくから!」 天風のことは瀬織の頭から消えた。 「くそっ、わかった、シズカはAILにスクランブルをかけて。」 「もうスタンバイさせてる。 米本議員はまだ話してない。」 「よし。」 瀬織はすぐに米本に電話をつないだ。 天風のバイクは、瀬織のクルマに気がついた。 30メートル離れて、瀬織のクルマの横に、停まっている。 電話をしている瀬織と、天風の目が合った。 天風と目を合わせながら、米本と話す。 「母さん? ドジコが拉致された。 犯人はわからないけど… 警察も動いてるから、後押しをお願いするわ。 何かわかり次第、私にも連絡を。」 電話を切る。 天風は、バイクを降りて、後ろの席にいる杉崎は残したまま、瀬織のクルマに近づいた。
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