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「呪術師はやはり危険な存在です! 彼らを制御するには自己申告制の保護政策ではなく、一ヶ所で彼らを縛ることが重要なのです! 人権だのなんだの、ここで迷えばすぐに奴らから二の矢が飛んでくるでしょう……我らが王よ、ご英断を!」
突然ソフィアが立ち上がり、ここまでの意見とは全く違うことを声を張り上げて主張し始めた。
「え……? とりあえず、私は王ではありませんが」
突然の手のひら返しに混乱したレイが辛うじてそれだけ言うと、ソフィアは一度目を見開き、それから声を出して笑った。腹を抱えての大爆笑である。しかし部外者である彼女の笑い声を誰かが聞きつけると厄介なので、レイは慌ててソフィアの口を手で塞いだ。驚いた様子の彼女に、空いている左手の人差し指を自分の口へ持ってきて「静かにしてください」とジェスチャーする。頷くと、彼女はソファにどかっと乱暴に座った。本当に分かったのか不安になる。
「いやぁ、その切り返しは予想してなかったなぁ……まぁ私としては、レイちーさえよければ私が国王になり次第夫として王にしてあげてもいいんだけど」
「遠慮します。あなたは王族の娘ですので、家柄を気にするべきです」
「尻の穴の小さい男ねぇ……そこが好きなんだけどさ」
さらっと貴族の女性らしからぬ語彙と大胆な発言を披露しながら、コップに残っていた水を飲み干す。この女性は、レイ以外の人間がいないときに限って言葉遣いが非常に粗雑である。それだけ心を許してくれているのだろうが、その口から出る言葉に辟易することも少なくない。
「さっきのはアレよ、今回の悪政を決行に至らしめた大臣の主張。似てなかった?」
ああ、とレイは納得する。その場面にはレイの仕事仲間も何人か居合わせたらしいが、生憎レイ自身は城を出ていた為その場面を知らない。後から話を聞いただけだ。
「最近物まねがブームなのですか?」
「間違ってないけど、今はそこ重要ではないでしょ」
ソフィアに指摘される。正論なので、レイは相手に合わせることにした。
「それについては仕事仲間からも聞きましたが、大分滅茶苦茶なことを言っていますね。今回のような事件を起こせる呪術者なんて、この国どころか世界中見渡してもそうそういません。もしかしたら二桁いないかもしれない。それなのに、今回の実行犯を代表のように扱って……風評被害もいいところです」
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