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件の事件の後、国内の呪術師は全て一つの監獄に入れられた。それが今レイとソフィアがいる場所であり、レイが管理を任されている。この政策によって、汚れ仕事がレイに回ってきた形だ。他にも3人の管理者がいて、4人で交代しながら業務にあたっている形だが、その中でレイがリーダーということになっている。ちなみに、他のメンバーも貴族としての位は決して高くはない。
「それがあっさり通されるのも問題だよ。私なんてまだ公の場ではお人形みたいなものでしかないから発言力無いけど、あの偏った意見を誰も否定しなかったってことが異常。まさか、みんな妥当な措置だと思ってるのかな」
ソフィアの疑問にレイは首を振る。妥当だと思っているはずが無い。それなのに誰も大臣を止めなかったのは、彼が王の最も信頼する男だからだろう。大臣の機嫌を損ねることは、王の機嫌を損ねることにもなる。気が立って大臣を罵倒した若い貴族の男が、その翌日から国内で姿を見せなくなったというのは有名な話だ。それほどまでに、王はその男を信頼している。
「父上は今病に侵されつつある。だから自分の死後どうすべきかについて本格的に準備を進めているようだけど、父上はあの髭もじゃが地位を失わないように約束しているらしいわ。流石に王位は私に譲る気でいるみたいだけど……私はヒゲダルマの伝言板になるのなんてまっぴらごめんよ」
「嫌いなのはよく分かったので、せめて呼び名を統一してください」
大臣、髭もじゃ、ヒゲダルマ。分かりにくいことこの上ない。
「さっき言ったレイちーを結婚して王に云々ってのもただ冗談ってわけではなくて、私でさえ特別視しないレイちーとなら偏らない政治を上手くやっていけそうってのもあるんだけど」
レイを無視してソフィアは続ける。相変わらずの大絶賛なので、レイは「恐縮です」の一言で受け流す。
「あの髭男、父上は私より信頼してるのよ。ソフィア、お前にはまだ政治は難しいだろう……って、私はもう子供じゃないっての!」
「落ち着いてください……随分と物まねを連発しますね、今度は国王様ですか」
声が大きくなってきたのを感じ、レイはソフィアを宥める。唐突に国王、ソフィアの父にあたる男の声を真似たりして、コップに注いだ液体は水ではなく酒だったのか、彼女は酔っているのではないかと不安になる。
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