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「つまり、普通に政治として処理するのは不可能でしょうね。あの髭をなんとかしないと」
「ついに大臣は髭になってしまいましたか」
「もうさ、レイちーが全部牢開けちゃえば? 鍵持ってるんだから簡単でしょ?」
ソフィアが事もなげに問いかけてくる。この女性は王族の血筋でありながら、法に抵触することを全く恐れない。頼もしいと思うことも偶に有るが、基本的に厄介である。
「いや……それでは解決になりません。そんなことをしても、根本的な解決にほど遠い。呪術師は全員このメイクモルトにいられなくなってしまいます」
「そりゃそうだ」
レイが真剣に答えたところ、ソフィアから間髪いれずに同意された。ダメだと思いながらもとりあえず言ってみただけらしい。しかし、このままでは打つ手が無いのだ。今すぐできる事など、本当に全員を独断で解放するぐらいしかない。レイの首が物理的か社会的に飛んで終わるだけだろうが。
「呪術師達が無害だって分かればいいんだけどね。国民からすれば、呪術師の力はあの放火犯のイメージが強いってのが非常に厄介。呪術師ってさ、どんな力を持っているかあまり見せないじゃない?」
ソフィアが次の方針を持ち出す。呪術者の悪いイメージを払拭できればそれで隔離する意味もなくなるということだ。ただし、ソフィアの言っている通り、呪術師は自分の持つ超人的な力の内容をひた隠しにする傾向にある。それがいかにしょうもない力であっても、それが差別の対象となりうるからだ。レイの親友であるカルルは度々その力を披露しているが、如何せん実用性に乏しい力なので一発芸以上の意味を持つことは少ない。
その傾向が悪い方に出てしまった。放火犯以上に強いイメージを人々に与えている呪術師は、ほぼ皆無である。
「悪いイメージを払拭……良いイメージで塗り替える。法を改正するよりはよっぽど上手くいきそうですが、呪術師を申告している人間が全員ここにいる限りは難しいでしょうね」
「だよねぇ。うむむ」
ソフィアは頭を抱える。呪術師達を救うのはなかなか骨が折れそうだ。
「今すぐに動くのは難しそうですね。今は従っておいて、策を練りましょう」
「父上が亡くなると髭が調子に乗りそうだから、急がないといけないけどね……まあ、また何かあったら来るよ」
ソフィアが立ち上がった。城に戻るつもりらしい。
「できればここにはもう来ないでほしいのですが」
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