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「志麻、そんなぶすっとしてたら、ぶー子って呼ぶからな」
口を膨らましたままでベッドに横たわる志麻が貴之には可愛くて仕方ない。
「やだ、そんなの。志麻、ぶー子じゃないもん。そもそも貴之が」
3ヶ月も付き合った彼氏との別れに対してではなく、貴之が約束を条件と言ったことに対して機嫌を損ねる志麻。貴之はそんな彼女が可愛くて仕方なかった。
「あー、はいはい、分かった。志麻はぶー子じゃない。だから、ほら、口戻して。可愛い可愛い顔で寝るんだもんな?」
貴之はベッドに腰掛け、彼女の頭をなでる。
前回志麻がここに出入りしていた時、彼女の寝間着はまだ冬物であった。しかし今はもう春物に変わっている。
森のようなダークグリーンのベッドカバーの中に咲いた一輪の可憐なピンクの花。
冗談でも言っていないとやってられない。
「貴之のバカ。いつも子供扱いして」
「してないしてない」
「もう」
「はいはい。電気切るよ?」
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