第1章 眠れぬ姫に夜を

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「あぁ、話してた後輩のお姫様? よかったねー、やっと別れたんだ。頑張ってねー」 その言葉に僅かながら安心する。 「ん、悪りぃな。急で」 「ううんー、いいよ、全然。また機会があったら遊んで?」 「あぁ」 「ここ、片づけなくて大丈夫?」 「あぁ、俺がやるから」 「そ、じゃあ帰るね」 ばいばーいと明るい声を出しながら笑顔で帰っていく彼女を見送り、女が全員こうだったら楽なのにと感じつつ、玄関の扉を静かに閉じた。 追い返すのに全く時間を食わなかったのは珍しく、それは幸運と言っても大袈裟ではない。 他の誰かに連絡するとは考えにくいけれど、あまりに長く本命の彼女を待たせるのは避けたい貴之にとって、これほどまでにあっさりした女は有り難かった。
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