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エレベーターいっぱいに広がるこの女物の香りが自分の衣類に移らないか心配しつつも、階段を使うのは時間も体力も惜しいという気持ちが強い。
不快さに眉をひそめつつ、貴之は素早く閉じるボタンを押した。
ーー今回は長かった。
上っていくエレベーターの中で考えるのは決まって彼女のこと。
こうやって迎えに行くのはおよそ3ヶ月ぶり。3ヶ月近くも関係が続くのは珍しいことで、結末は分かっていたものの、内心穏やかではなかった。
小さく溜息をついたとき、最上階の9階にたどり着いた。音もなく静かに開くドアを出て、彼女の住む903号室に向かう。
そう、彼女は貴之と同じマンションの9階に暮らしていた。
同じマンションに住んでいるのだから、本来迎えに行く必要などはない。しかしこれは暗黙のルールだった。
夜遅くに一人で男の部屋を訪ねさせるわけにはいかない。例えその相手が自分であっても。
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