第二章 三部

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ドンドン、ドンドン。 「開けて!開けてよ!」  拒否しているのにも関わらず、女は大声を上げて扉を叩き続ける。 ドンドン、ドンドン。 「開けろ!開けろ!」  綺麗な見た目とは真逆に、女の口調は荒くなる一方。それでも俺は女を無視し、自分の部屋でくつろいでいた。  しばらくすると、激しい物音は聞こえなくなった。 ――やっと諦めて帰ったか。 ほっと安堵の息を吐き、俺は読んでいた雑誌のページを捲る。 ガシャンッ――  その瞬間、微かに聞こえてくる破壊音。遠くの方で、ガラスが割れたような気がした。 「てめえ!」  叫び声を上げた兄貴が、表へ飛び出していく。 それでも、俺は部屋から出ようとはせず、ベッドの上でのんびりと雑誌を読んでいた。  家に石を投げ込まれることなど昔からよくあった光景。原因はいつも兄貴だ。
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