第二章 三部

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 結局、近くのコンビニまで弁当を買いにいくことにした。 エイプに乗ればあっという間に着くのだが、燃料節約の為、徒歩で向かう。  節約も何も、単に金が無いだけ。バイトをすればいいのかもしれないが、働く事が面倒臭い。 『金は親からもらうもの』 といった腐った信念を貫いている俺は、ただのクソ野郎だ。  それよりも、先程からやけに身体が重い。何かが乗っているというより、“力が抜けていく”感じだ。 「はあ……はあ……」  走ってもいないのに息切れ。まるで、誰かに首を絞められているような苦しさが喉元を襲う。 「シネ」  誰かが言った。辺りが真っ暗なので誰が言ったのかは分からないが、確かにそう聞こえた。 「私を愛さないなら、いっそのこと死んでしまえ!」  二度目の声が聞こえた直後、よりいっそう息苦しさが増す。 首に食い込んでくる尖った爪。俺の皮膚をがりがりと引っ掻く。  声の主は間違いなく女。しかし、女にしては力強い。
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