第二章 三部

17/22
前へ
/141ページ
次へ
 家に帰ると、真っ先に部屋へと急ぐ。 運良く、兄貴は風呂に入っているため女の事がバレる心配はない。  女に手を上げたことがバレれば、確実に大目玉を食う。たぶん、殴られる程度じゃすまないだろう。 「一晩だけだからな」  俺は女をベッドに寝かせ、言い聞かせるように言った。 「…………」 しかし、返事はない。それもそのはず。もうすでに、女は気絶してしまっているからだ。 「あーあ、何で助けたんだろ」  俺は深く溜め息を吐き、床の上に尻を着く。 『助けたい』 とは、全く思っていない。本音は、 『死なれたら困る』 だ。  少年院も、少年刑務所も、家裁も、鑑別所も、面倒な事は全部避けたい。特に鑑別所は最悪。監視されている状態のまま裁判を待つなど堪えきれない。反省文だってごめんだ。 「あー、腹へった」  この女のせいで飯を買いそこねた。かといって、もう一度買いにいくのは面倒臭い。 (パンでも食ってよ) 何も食わないよりはましだ。と、俺は部屋を出て台所へ向かう。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

451人が本棚に入れています
本棚に追加