第二章 三部

18/22
前へ
/141ページ
次へ
 食パンを焼いている間も女は目を覚まさなかったようで、スースーと気持ち良さそうに寝ている。 (いっそのこと、首絞めて殺そうか) 今までされた数々の嫌がらせを思い出すと、良くない考えが脳裏に浮かぶ。  それにしても、この女は綺麗な顔している。 とてもじゃないが、ストーカーするような顔には見えない。 『容姿端麗(ようしたんれい)』 まさにその言葉が似合う。  しかし、殺されかけたのも事実。ナイフ等の凶器を持っていないか、彼女の持ち物であるバッグを漁るが何も出てこない。 特別目につくものと言えば、財布と携帯電話くらいだ。  だが、その携帯が一番曲者だった。 何かの弾みて触れた途端、画面に移る文字の羅列。 中身は全て高松さんに関する個人情報などが書かれている。 「見るなあああ!」 「うわっ!」  突然目を覚まし起き上がった女は甲高い声を上げ、俺の手から携帯電話を奪い取る。 俺はぎょっとして女を見たが、肝心の彼女は携帯電話を大事そうに握りしめていた。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

451人が本棚に入れています
本棚に追加