第二章 三部

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「そんなこと無い!! そんなこと、あるはずがない!!」  それても、女は懲りずに叫び続ける。 このままでは、兄貴にバレるのも時間の問題。 「黙ってろ!!」  これはまずいと、咄嗟に女の口を手で塞ぐ。 「ん――!ん――!」  女はバタバタと暴れ、俺の手から逃れようと必死。 “そのまま殺れ” 俺の知らない誰かが、また話しかけてきた。 “そうすれば、お前は楽になれる” 何度も、何度も。 「ああ……」  俺は見えないそいつに返事をし、女の首を思いっきり絞めた。  ぐいぐいと肉に食い込んでいく10本の指。絞めれば絞めるほど、女の口からダラダラとよだれが流れ出る。 「シネ!シネ!」  渾身の力を振り絞り、更に首を絞める。 「あ……ああ……が――」  もがき苦しむ女を見るのが楽しかった。絞めれば絞めるほどもがき、オエオエと声を出す。 (好きな男に殺されるのって、どんな気分なんだ?)  俺は今、それを聞きたくてうずうずしている。しかし、訊いたところで答えは返っては来ないだろう。 何せ、もう息をしていないのだから。 「あーあ」 まだ、何か物足りない。 あっという間に息絶えた女を前に、俺は“つまらない”と、顔をしかめる。
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