第二章 三部

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 俺はまた、人を殺した。 しかし、罪悪感など全く芽生えず、俺は、 “この醜い死体をどう隠そうか” そればかり考えていた。  兄貴が自室に入っていくのを目で確認し、死体を抱えたまま部屋から風呂場へと運ぶ。  女の体は恭輔の時よりも軽いため、運ぶ作業はかなり楽。 兄貴にバレないよう忍び足で廊下を歩き、ぐったりとした女を浴室に寝かせた。  そして、急ぎ足で台所へ行き、包丁と黒いポリ袋を片手に急いで戻る。  “念には念を”と、浴室の扉の鍵を閉め、誰も入って来れないような状況を作った。 「…………」  包丁を握りしめた俺は、ゴクリと息を呑む。 「……はあ」  やはり、人の身体を解体するのには、少し勇気がいる。 だからこそ、持っていた錠剤を口に含み、心を落ち着かせた。  しかし、錠剤と称しても中身は危険な薬物。 理性は完全に壊され、足が宙に浮いているような感覚が俺を襲う。
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