第一章 一部

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「お、俺知らねえからな!!」  真っ先に逃げたのは、そうなってしまった原因を作った張本人である恭輔。逃げ足の早い恭輔は、目にも止まらぬ早さでゲームセンターの側から離れていく。 「おい、待てよ!!」  恭輔の後を追うように逃げたのは太一。恭輔同様、親友の後ろ姿もすぐに見えなくなった。 「ふざけんなよ……」  結局、その場に残ったのは俺だけ。俺はほんの少しだけ戸惑いを感じたが男の手にある財布と先程俺が捨てた鞄を慌てて拾い上げ、二人の後を追って走る。 『足がつくものは絶対に残すな』 高橋さんから教わった事を生かし、人の目につかない道を選んで逃げた。  しばらく走っていると、遠くの方で救急車のサイレン音が聞こえてきた。たぶん、男を病院へ運ぶためのものだろう。 ほっと胸を撫で下ろし、人気の無い所で足を止め鞄の中身を漁る。 (……あった)  見つけたのは青い薄型の携帯電話。俺は素早く電池パックを外し、タッチパネルを足で踏みつける。  一度目は画面に傷が。二度目はヒビが入り外装が割れた。三度目は完全にガラクタに。  俺は見るも無惨な姿に変わり果てた携帯電話を拾い上げ、近くにあったごみ箱へ迷わず捨てた。
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