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「辰輝さん、そりゃないっスよ~」
と、高松さんは笑っていた。――が、笑っているのは口だけ。目は全く笑っておらず、じっと兄貴を睨んでいる。
「ざーとらしい(わざとらしい)んだよ、てめえ」
地面の上にレンチ(スパナ)を置いた兄貴が、こちらへ近付いてくる。
「俺の弟に手出してみろ、この町に住めねえようにしてやっからな!
そのちっぽけな脳味噌で覚えてろ!」
そして、助手席のドアの前に立つと、高松さんの胸ぐらを無理矢理掴み言った。
兄貴は、今すぐにでも高松さんを窓から引きずり下ろしそうな雰囲気。目前にまで迫った彼の顔に、兄貴の息が吹きかかる。
「だ、出しませんって――」
さすがの高松さんでも、兄貴の前では小心者。
猫を被りな所が、逆に恐い。
「…………」
兄貴はそれにたいしてうんともすんとも言わず、VTの方へ歩いていく。
「薬はやめとけー。馬鹿になんぞ」
レンチを握りしめた彼は、もう此方を見ては居なかった。
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