第三章

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「お前の兄ちゃんは何様のつもりだ?」  移動する車内。運転している木山さんが、苛立った声で言った。 「……すいません」  これは、謝るべき状況。ルームミラーに映る彼の目は、明らかに俺を睨んでいる。 「まあ、弟が大事なんだろうよ」  しかし、珍しく高松さんが怒らなかった。どうやら、兄貴との上下関係をわきまえているらしい。 「“ブラコン”すか?」 「ちげーだろ、ばか」 兄貴の事をよく知らない木山さんよりは、幾分マシだ。 「辰輝さん、迫力あんなぁ。今でも、現役バリバリじゃん」  太一が言っているのは、暴走族時代の話。 「今はそうでもない」 今ではもう、真面目に生きている。 薬も暴走もやっておらず、ただバイク好きのおっさんだ。
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