第三章

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 暗い窓ガラス越しに見える、殺風景な景色。肉ミンチとなったマミを沈めた沼が遠くの方に見える。  先程から、誰かに見張られているような感じがしてならない。 ――もしかして、“マミ”だろうか? 一瞬だけそう思ったが、『それはない』と、自分で自分の考えを否定する。 「この前、変な爺がいてよ――」  田んぼ道を抜けた後、何かを思い出した高松さんが口を開く。高松さんは爺の特徴などを熱弁していたが、聞いている内に俺が見た気味の悪い爺と容姿が似ていることに気付いた。 「そいつ、足と手がねえんだ。そんでもって、芋虫みてえに地面を這(は)ってくるしよ。  ああ、嫌なもん見た」  彼は苦虫を噛み潰したような顔で話を続ける。 「夢でも見てたんじゃないっすか~?」 「んなわけねえだろ、ばかか!」 「いてっ」  しかし、木山さんは信用していないようで、むくれた高松さんが彼の頭を小突いた。
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