第三章

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「お前――ふざけんなよ!」  熱り立った高松さんが、木山さんの頭を思いっきり殴る。 「いってええええ――え?」 最初は絶叫していた彼だが、目前にまで迫る電柱を見た瞬間、唖然としていた。 「“え?”じゃねえよ、“え?”じゃ! こっちは死ぬとこだったんだぞ、コルァ!」 「わ……わわっ!!  すんません!!マジですんません!!」  やはり、木山さんは気を失っていたようす。状況を把握した途端、あたふたと慌てふためき始めた。  普段なら笑って流すところだが、今回は笑えるような状況ではない。 「まあ、そういう時もあるだろ」 なのに安藤さんだけ、“ハハハ”と声を出して笑っている。 「お前、この状況でよく笑えるよな」  高松さんもおかしいと感じたらしい。訝しむような目付きをしながら言った。 「スリルがあっていいじゃん」  しかし、安藤さんの返答には驚かされるものがある。と言うより、異常。 「……スリル?」 さすがの高松さんも、顔をひきつらせていた。
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